
新潟県三条市の温泉施設「八木ヶ鼻温泉 いい湯らてい」で、基準を大きく超えるレジオネラ属菌が検出され、さらに過去の検査でも基準超過後に必要な浴槽の利用停止を行っていなかったことが明らかになりました。
三条市は2026年10月15日に臨時記者会見を開き、指定管理者の株式会社下田郷開発の衛生管理を検証した結果、法令に基づく管理が適切に行われていなかったと発表しています。市側も不適切な管理を把握・是正できなかったとして謝罪しました。三条市
今回の発端となったのは、2026年9月に行われた三条保健所の検査です。
9月17日に採取した「和楽の湯」のジャグジー・寝湯系統の浴槽水から、100mL当たり2000CFUのレジオネラ属菌が検出されました。
基準は100mL当たり10CFU未満のため、報道では基準の境目となる10CFUの約200倍とされています。kenoh.com
ただし、ここで注意したいのは、「200倍」という数値と「過去49件」は同じ検査の話ではないことです。
2000CFUが確認されたのは2026年9月の保健所検査です。一方、過去の施設側の水質検査では2020年以降に49件の基準超過が確認されており、公開された一覧では過去の最高値は2024年の180CFUでした。
問題を時系列で見ると、次のようになります。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 9月上旬 | 県内のレジオネラ症患者が「いい湯らてい」を利用していたことが判明 |
| 9月17日 | 三条保健所が立ち入り検査、浴槽水を採取 |
| 9月24日 | 基準超過のレジオネラ属菌を確認。同日夜から温浴施設を休止 |
| 9月25日 | 全館休館 |
| 10月9日 | 6つの配管系統すべてで再検査の陰性を確認 |
| 10月15日 | 三条市が過去49件の不適切な対応などを公表 |
単に今回の検査で菌が出たというだけではなく、調査によって長年の衛生管理上の問題が明らかになったことが、今回のニュースの大きなポイントです。
6年間で49件の基準超過でも浴槽を利用停止していなかった
三条市によると、記録を調査した結果、6つの配管系統で計49件の不適切な取り扱いが確認されました。
市が公表した検査一覧では、基準超過件数は次のようになっています。
| 年 | 基準超過件数 |
|---|---|
| 2019年 | 0件 |
| 2020年 | 1件 |
| 2021年 | 3件 |
| 2022年 | 7件 |
| 2023年 | 20件 |
| 2024年 | 14件 |
| 2025年 | 0件 |
| 2026年 | 4件 |
| 合計 | 49件 |
特に2023年は20件、2024年は14件と集中しています。
本来、基準を超えるレジオネラ属菌が検出された場合は、消毒・洗浄をしたうえで、再検査によって陰性が確認されるまで同じ配管系統の浴槽などを利用停止にする必要がありました。
ところが「いい湯らてい」では、この停止措置が行われていませんでした。
つまり、「検査をしていなかった」のではありません。
検査で基準超過を把握しながら、必要とされる利用停止の対応につながっていなかったことが問題になっています。
なぜ6年間も営業継続?放置した理由は?
では、なぜ基準超過が何度も確認されながら、約6年以上にわたって営業が続けられたのでしょうか。
三条市が10月15日に示した原因は、現時点では主に指定管理者側の衛生管理に関する知識・認識不足と、組織的な管理体制の欠如です。
市は、
「衛生管理に関する指定管理者の知識、認識の欠如が要因と考えている」
と説明しています。
さらに、不適切な対応を下田郷開発が組織として共有し、是正する体制も構築されていなかったとしています。
基準超過なら利用停止が必要だと組織として把握していなかった
地元報道によると、施設側はレジオネラ属菌の水質基準そのものは認識していた一方、基準を超えた場合に、再検査で陰性となるまで該当する配管系統の浴槽を止める必要があることを組織として把握していなかったとされています。
そのため、
「菌が基準を超えた」
↓
「消毒する」
↓
「そのまま営業を続ける」
という対応が繰り返されていたとみられます。
ただし、市は現在も「なぜこのような取り扱いが行われるに至ったのか」について下田郷開発への調査を続けています。
したがって、現時点で「利益を優先して意図的に危険を放置した」などと断定できる事実は確認されていません。
検索では「放置した理由」が気になるところですが、より正確には、知識や認識の不足と、異常を止める組織的な仕組みが機能していなかったことで、不適切な営業が長期化したと見るのが現時点では適切でしょう。
衛生管理の不備はレジオネラ菌の基準超過だけではなかった
今回明らかになった問題は、基準超過時に浴槽を止めなかったことだけではありません。
三条市は日常の衛生管理についても、複数の不備を確認しています。
具体的には、循環ろ過装置・配管の消毒、集毛器の清掃、貯湯槽の塩素濃度管理です。
配管の消毒は2週間に1回以上必要なのに3週間に1回
循環ろ過装置と循環配管については、県条例などで2週間に1回以上の消毒・洗浄が必要でした。
ところが、いい湯らていでは3週間に1回しか実施していませんでした。
さらに三条市によると、2026年4月から下田郷開発の担当課長の判断で塩素消毒の回数を減らしていたことも分かっています。
なぜ回数を減らしたのかについては、10月15日時点でも調査が続いています。
毎日必要な集毛器の清掃は週1回程度
髪の毛などを循環する湯から取り除く「集毛器」は、毎日清掃する必要があります。
しかし、施設では1週間に1回程度しか清掃していませんでした。
しかも関係者への聞き取りでは、この取り扱いは少なくとも2018年以前から続いていたことが確認されています。
貯湯槽の塩素濃度を測定していなかった
原湯を一時的にためる貯湯槽については、湯温が60℃未満の場合、0.4mg/L程度の塩素濃度を維持する必要があります。
しかし、いい湯らていでは60℃未満だったにもかかわらず、塩素濃度そのものを測定していませんでした。
水質検査だけでなく、日常的な設備管理の複数箇所でルールから外れた運用が続いていたことになります。
私は、今回の問題では「49件」という件数以上に、複数の衛生管理工程でチェックが働かなかったことが重要だと感じました。
49件はどの浴槽で確認された?
三条市が公開した資料によると、49件の基準超過は6つの配管系統で確認されています。
対象となった系統は、
数奇の湯ジャグジー、数奇・和楽のさら湯、数奇の湯マグマ、数奇・和楽の露天岩風呂、数奇・和楽の露天見晴らし、和楽の湯ジャグジー・寝湯
です。
6系統すべてで少なくとも一度は基準超過が確認されており、特定の一つの浴槽だけで起きていた問題ではありません。
一方、循環ろ過装置を使っていない水風呂では、基準超過は確認されていないと報じられています。
「200倍」の2000CFUはジャグジー・寝湯から検出
今回、特に大きく報じられたのが「基準の200倍」という数字です。
三条保健所が9月17日に立ち入り検査を行い、「和楽の湯」のジャグジー・寝湯系統から採取した浴槽水を調べたところ、2000CFU/100mLのレジオネラ属菌が検出されました。
基準は10CFU/100mL未満です。
そのため10CFUを基準の境目として比較すると、2000CFUは200倍に当たります。
なお、三条市が公表した2020年以降の通常検査記録では最高180CFUだったため、今回の2000CFUは過去の一覧にある最高値を大幅に上回っています。
ジャグジーや循環式浴槽では、湯の細かな水滴であるエアロゾルが発生することがあります。
厚生労働省によると、レジオネラ属菌に汚染された循環式浴槽などから発生したエアロゾルを吸い込むことが感染経路の一つとされています。厚生労働省
利用者1人がレジオネラ症を発症したが因果関係は未確認
今回の調査が始まるきっかけとなったのは、9月上旬に「いい湯らてい」を利用していた県内の人がレジオネラ症を発症したことでした。
三条市の公式資料でも、9月上旬に県内のレジオネラ症患者が施設を利用していたことが記載されています。
ただし非常に重要なのは、この患者の発症原因が「いい湯らてい」だったと確認されたわけではないことです。
三条市は施設利用と発症の因果関係について確認されていないと説明しており、この患者以外の健康被害の報告も受けていないとしています。
したがって、
「いい湯らていでレジオネラ症に感染した」
と現時点で断定することはできません。
利用後に体調不良があった場合は?
厚生労働省によると、レジオネラ肺炎の潜伏期間は一般に2~10日です。
全身倦怠感、頭痛、筋肉痛などから始まり、咳、高熱、寒気、胸痛、呼吸困難などが現れることがあります。厚労省は早期診断・早期治療が重要としています。
施設を利用した後にこうした症状が現れた場合は、自己判断だけで済ませず、利用歴を医療機関に伝えて相談することが重要です。
下田郷開発の責任は?指定管理者として施設を運営
「いい湯らてい」は三条市の施設で、運営を担っている指定管理者が株式会社下田郷開発です。
今回、三条市が衛生管理状況を調査した対象も下田郷開発でした。
市は原因について、
指定管理者の衛生管理に関する知識・認識不足
不適切な対応を組織として共有できていなかった
是正する体制が構築されていなかった
と説明しています。
さらに、2026年4月から配管などの塩素消毒の回数を減らしたのは、下田郷開発の担当課長の判断だったことも公表されています。
ただし、下田郷開発や特定の職員に今後どのような処分が行われるのかは、10月15日時点では決まっていません。市は調査を継続したうえで対応を判断するとしています。
三条市にも管理監督責任「水質検査結果を確認していなかった」
問題は指定管理者だけにとどまりません。
三条市自身も監督責任を認めています。
市によると、指定管理者の水質検査結果などを市側が確認しておらず、不適切な取り扱いを把握・是正できなかったということです。
また、市と指定管理者との協定では毎年度の事業実施報告を求めていましたが、基準超過があった場合に市へ報告する仕組みが具体的に定められておらず、市側も問題があれば報告されると考えて積極的な確認をしてこなかったと報じられています。
滝沢亮市長は10月15日の会見で謝罪し、市が公の施設の設置者として管理監督責任を十分に果たせていなかったことを認めています。
指定管理者に運営を任せていたからといって、市の責任がなくなるわけではありません。
長期間問題が発見・是正されなかった背景には、運営側と監督側の両方でチェック体制が機能していなかったことがあったと考えられます。
いい湯らていは2010年にもレジオネラ菌を検出していた
今回のニュースでは、過去にも同じ施設でレジオネラ属菌が検出されていたことが注目されています。
「いい湯らてい」では2010年5月にも浴槽水からレジオネラ属菌が検出されていました。
当時も、施設を利用した60代のレジオネラ症患者がいたことを受けて県が立ち入り調査を行い、浴槽水から菌を検出しています。
ただし、このときも患者の発症と施設との因果関係は不明とされました。
施設側は当時、配管や浴槽の消毒洗浄を行い、水質検査の回数を増やすなどの再発防止策を検討していました。
今回、再び長期間の衛生管理問題が判明したことについて、滝沢市長も2010年当時の反省を生かしきれなかったことを重大視しています。
過去に一度問題を経験していたにもかかわらず、年月がたつ中で管理ルールや組織の知識が十分に継承されなかった可能性も、今後の検証ポイントになりそうです。
いい湯らていはいつから休館?営業停止なの?
いい湯らていは、2026年9月24日夜から温浴施設の利用を休止し、9月25日から全館を休館しています。
ニュースでは「営業停止」と表現されることもありますが、三条市の公式発表は「営業休止」としています。
10月15日時点の公式資料では、行政処分として一定期間の営業停止命令を受けた、という表現ではありません。
この違いは分けて考えた方がよいでしょう。
再検査は全浴槽で陰性!それでも営業再開は未定
施設では休館後、6つの配管系統すべての浴槽などについて再検査を行いました。
三条市によると、10月2日までに採水し、10月9日にはいずれからもレジオネラ属菌が検出されなかったことを確認しています。
では、すぐに営業再開できるのでしょうか。
結論として、2026年10月15日時点で再開時期は未定です。
三条市は、
「衛生管理に関する不適切な取扱いの全容が明らかになり、今後の対応方針が決まるまで営業休止を継続する」
としています。
つまり、水質検査が一度陰性になっただけで再開するのではありません。
なぜ長期間不適切な管理が続いたのかを究明し、改善策や管理体制が機能することまで確認したうえで再開を判断する方針です。
私は、今回の経緯を考えると、単に配管を洗浄して菌が出なくなったというだけでは利用者の不安は解消しにくく、管理体制そのものの再構築まで示すことが重要だと感じます。
関係者の処分や今後の対応は?
10月15日時点では、下田郷開発や関係職員に対する具体的な処分は発表されていません。
三条市は現在、
これまでに判明した以外の不適切な衛生管理がないか
なぜ不適切な取り扱いが続いたのか
について調査を継続しています。
その結果を踏まえ、指定管理者への対応や関係者の処分、再発防止策などを判断する方針です。
現段階では処分内容を予測したり、「指定管理を解除される」などと断定したりすることはできません。
今後の記事更新ポイントとしては、営業再開日、調査結果、関係者の処分、指定管理者への措置、具体的な再発防止策が焦点になりそうです。
いい湯らていが6年以上営業を続けた理由をまとめると
「いい湯らてい」では、2020年以降だけでも49件のレジオネラ属菌の基準超過が確認されていたにもかかわらず、再検査で陰性になるまで該当浴槽を止めるという必要な措置が取られていませんでした。
三条市が現時点で原因として挙げているのは、指定管理者の衛生管理に対する知識・認識の不足、組織内で問題を共有・是正する体制の欠如、そして市側が水質検査結果を確認していなかったことです。
加えて、配管消毒の頻度不足、集毛器の清掃不足、貯湯槽の塩素濃度を測定していなかったことも判明しました。
9月の保健所検査では和楽の湯のジャグジー・寝湯系統から2000CFU/100mL、基準の境目の約200倍に当たるレジオネラ属菌が確認されています。
一方で、施設を利用したレジオネラ症患者1人と「いい湯らてい」との因果関係は確認されていません。この点は「感染者が出た施設」と断定しないよう注意が必要です。
施設は9月25日から休館しており、10月9日までの再検査ではすべて陰性となりましたが、営業再開日はまだ決まっていません。
長年の不適切な管理がなぜ是正されなかったのかについては現在も調査中です。今後は、三条市と下田郷開発がどこまで原因を明らかにし、具体的な再発防止策と責任の所在を示すのかが注目されます。

