
大阪市で障がい福祉事業などを展開する株式会社絆ホールディングスとグループ4法人が破産しました。
大阪地裁は2026年11月2日、次の5法人について破産手続き開始を決定しています。
- 株式会社絆ホールディングス
- 株式会社JOB connect
- 株式会社レーヴ
- 株式会社リベラーラ
- NPO法人リアン
破産管財人には、これまで保全管理人を務めていた野上昌樹弁護士が選任されました。
5社の負債総額は289億5361万円。
帝国データバンクによると、絆ホールディングス単体の負債は約55億191万円です。
絆ホールディングスはどんな会社?
絆ホールディングスは2012年設立で、大阪市中央区に本社を置く福祉関連会社です。
障がいのある児童向けの放課後等デイサービスのほか、フリースクール、同業者向け研修、企業向けビジネスマナー研修なども手掛けていました。
ピークとなった2023年3月期には、売上高約24億円を計上しています。
帝国データバンクによると、破産時の代表者は下川弘美氏です。
ただし、後述する刑事告訴について、下川氏本人が告訴対象者だと今回確認できた資料から断定することはできません。
なぜ破産した?不正受給問題が大きく影響
破産に至る大きな転機となったのが、グループ会社が運営していた就労継続支援A型事業所の給付金不正受給問題です。
大阪市は2026年3月27日、NPO法人リアン、レーヴ、リベラーラ、JOB connectが運営する4事業所について、訓練等給付費の請求に不正があったと認定しました。
4事業所の指定を5月1日付で取り消し、不正請求額に40%の加算額を加えた110億7650万7073円の返還を求めています。
その後、資金繰りが急速に悪化。
グループ4社は6月22日に大阪地裁へ会社更生法の適用を申請しましたが、10月1日に更生手続き開始の申し立てが棄却され、最終的に11月2日の破産手続き開始へ進みました。
そのため、
「不正受給だけが法的な破産原因」
と単純化するのは正確ではありませんが、巨額の返還請求や指定取消しが経営・資金繰りを大きく悪化させたことは、東京商工リサーチなどの倒産経緯から確認できます。
「36か月プロジェクト」とは?何が不正だった?
今回の問題で重要なのが、グループ独自の**「36か月プロジェクト」**です。
大阪市によると、事業所では就労継続支援A型の利用者をいったん自社で雇用した後、再びA型事業所の利用者へ戻すことを前提とした支援を行っていました。
その自社雇用を「一般就労への移行」として扱い、就労移行支援体制加算を請求していました。
しかし大阪市は、自社雇用が36か月プロジェクトという一連の支援プロセスの途中にすぎず、制度が求める「定着に向けた継続的な支援体制が構築された一般就労」とは評価できないと判断しました。
さらに、一部の利用者を過去3年間に複数回、加算の対象として重複算定していたことも不正請求と認定しています。
不正受給は110億円?79億円?金額が違う理由
報道を見ると、
約110億円
と
約79億円
という2種類の数字が出てきます。
これは意味が異なります。
大阪市が行政処分として返還を求めた金額は、110億7650万7073円です。
この金額には、実際の不正請求額に加えて、障害者総合支援法に基づく40%の加算額(ペナルティー)が含まれています。
一方、東京商工リサーチなどによると、大阪市は給付金約79億円を不正に受給した疑いがあるとして、元代表者ら5人について詐欺容疑で大阪府警へ告訴状を提出しました。
つまり、
約79億円=刑事告訴で問題とされた不正受給額
約110.8億円=行政上の返還請求額+40%の加算額
という違いです。
刑事告訴された?有罪は確定していない
大阪市は2026年4月30日、給付金約79億円を不正受給したとして、事業所運営法人の元代表者ら5人について詐欺容疑で大阪府警へ告訴状を提出したと報じられています。
ただし、
刑事告訴されたこと
と
刑事責任が確定したこと
は別です。
2026年11月4日時点で、今回確認した資料からは元代表者らについて有罪判決が確定したとの情報は確認できません。
大阪市による「不正請求」の認定は行政上の判断であり、刑事事件としての責任は捜査や裁判で別途判断されます。
負債289億5361万円の内訳は?
5法人の負債は次の通りです。
| 法人 | 負債額 |
|---|---|
| 絆ホールディングス | 約55億191万円 |
| JOB connect | 約20億7623万円 |
| レーヴ | 約78億226万円 |
| リベラーラ | 約61億4536万円 |
| NPO法人リアン | 約74億2783万円 |
| 合計 | 289億5361万円 |
ここで注意したいのは、289億5361万円すべてが不正受給によって生じた負債という意味ではないことです。
金融機関や取引先などに対する各法人の債務を合算した負債総額であり、大阪市からの返還請求なども含め、さまざまな債務が存在します。
なぜ会社更生法は認められなかった?
絆ホールディングス、JOB connect、レーヴ、リベラーラの4社は6月22日、事業を続けながら再建することを目指して会社更生法の適用を申請しました。
しかし大阪地裁は10月1日、更生手続き開始の申し立てを棄却しています。
その後は破産手続きへ移行し、11月2日に正式な開始決定が出ました。
ただし、帝国データバンクや東京商工リサーチ、会社側の今回の発表では、裁判所が棄却した具体的な判断理由の詳細までは明らかにされていません。
そのため、「返還請求が巨額だったから棄却された」などと理由を一つに断定することはできません。
破産しても事業はすぐ終了しない
「破産=すべての事業所が即日閉鎖」と考える人もいるかもしれませんが、今回は異なります。
グループは9月30日、大阪府和泉市の有限会社ティー・エヌ・プランをスポンサーとして、障害児通所支援事業などを譲渡する契約を締結しました。
大阪地裁も、破産手続き開始後に事業を継続することを許可しています。
そのため、スポンサーへの事業承継が完了するまでは、破産管財人の管理下で対象事業所の運営を継続する方針です。
利用者はどうなる?
今回の破産で特に影響が懸念されるのが、福祉サービスの利用者です。
すでに不正請求の対象となった就労継続支援A型4事業所については、指定取消しに伴って閉鎖されています。
大阪市は当時、1000人を超える利用者について、一般就労や別の事業所への移行など、それぞれの希望を聞きながら支援すると説明していました。
一方、放課後等デイサービスなど現在も継続している事業については、ティー・エヌ・プランへの事業譲渡を予定しているため、現時点では一斉閉鎖する予定とはされていません。
従業員はどうなる?
現在継続している事業所については、事業承継が完了するまで運営が続きます。
ただし、
全従業員の雇用がそのままスポンサーへ引き継がれるのか
事業譲渡後の雇用条件がどうなるのか
について、2026年11月4日時点で全体像は公表されていません。
破産手続きでは今後、事業譲渡の条件や各法人の財産・債務を破産管財人が整理していくことになります。
破産管財人は誰?
5法人の破産管財人には、野上昌樹弁護士(弁護士法人大江橋法律事務所)が選任されています。
野上弁護士は会社更生法の申し立て後から保全管理人を務めており、今後は破産管財人として、
資産の管理・換価
債権者への対応
スポンサーへの事業承継
債権調査や配当
など、破産手続きを進めることになります。
今後はどうなる?
今後の大きなポイントは、事業譲渡と大阪市の返還請求、刑事捜査です。
まず福祉事業については、ティー・エヌ・プランへの承継が完了するまで、破産管財人のもとで継続されます。
一方、大阪市が求めている約110億7650万円の返還については、破産手続きの中で債権として扱われることになります。
大阪市の横山市長も10月1日の会見で、会社更生手続きの棄却を受け、返還請求が今後どうなるかについて確認を進める考えを示しています。
また、約79億円の不正受給疑惑をめぐる刑事告訴は破産手続きとは別問題です。
会社が破産したからといって、関係者への刑事捜査が自動的に終了するわけではありません。
絆ホールディングスの破産理由をまとめると
絆ホールディングスなど5法人は2026年11月2日、大阪地裁から破産手続き開始決定を受けました。
負債総額は289億5361万円です。
破産に至る大きな背景となったのが、グループ4法人の就労継続支援A型事業所で行われていた「36か月プロジェクト」をめぐる給付金問題でした。
大阪市は、
給付金請求に不正があったと認定
4事業所の指定を取消し
約110億7650万円を返還請求
しています。
さらに約79億円の不正受給疑惑については、元代表者ら5人を詐欺容疑で大阪府警へ刑事告訴したと報じられています。
その後、グループは会社更生法による再建を目指しましたが、10月1日に申し立てが棄却され、11月2日に破産へ移行しました。
ただし、障害児通所支援などの事業はすぐに終了するわけではありません。
ティー・エヌ・プランへの事業譲渡が完了するまで、破産管財人のもとで事業所運営を継続する予定です。
今後は、事業承継によって利用者へのサービスを維持できるのか、大阪市が求める巨額の返還金をどの程度回収できるのか、そして刑事告訴を受けた捜査がどう進むのかが焦点になります。

