
タイの著名な仏教僧として知られていた「ルアンポー・アティチョート」が、寺院資金9200万バーツ以上を不正に流用した疑いなどで逮捕されました。
逮捕されたのは、アユタヤ県の王室寺院「ワット・プッタイサワン」で住職を務めていた66歳のプラ・ワチラヤーン。現地では「ルアンポー・アティチョート・タンマワロー」などの名前でも知られていました。2026年9月10日、タイ中央捜査局(CIB)傘下の犯罪抑制局が寺院の僧房で身柄を確保しています。
事件が大きく注目された理由は巨額の寺院資金をめぐる疑惑だけではありません。
元住職と親しい女性が僧房内で性的な行為に及んでいるとされる防犯カメラ映像が確認され、その女性も資金移動への関与を疑われて逮捕されました。現地メディアでは女性を47歳のプンヤウィー氏と報じ、過去に大学のチアリーダーだったとの情報も広がっています。
アティチョート元住職とは何者なのか、何をした疑いが持たれているのか。元チアリーダー女性とされるプンヤウィー氏との関係や約9200万バーツの横領疑惑、防犯カメラ映像、還俗、押収された巨額資産まで確認します。
タイ高僧アティチョートは何した?寺院資金9200万バーツ超の横領疑惑
アティチョート元住職が逮捕された中心的な理由は、ワット・プッタイサワンの資金を私的に流用した疑いです。
タイ警察は、寺院名義で受け取った寄付金などが寺院の正式な口座へ入金されず、元住職や親しい女性側へ流れていた可能性があるとみています。
約2年間で20件以上の寄付証明書
The NationやKhaosod Englishによると、警察の捜査では2年以上にわたって寺院名義の寄付証明書が20件以上発行されていたとされています。
その一方で、対象となった資金が寺院口座へ適切に入金されていなかった疑いが浮上しました。
警察が当初把握した被害額は9200万バーツ以上です。日本メディアでは約4億3000万円規模と紹介されています。
寺院改修費とお守り代金が焦点
報道によると、問題となった資金には寺院改修のための寄付金や、仏教のお守り・聖なる品物に関連する収入が含まれています。
AFP系報道では、約8900万バーツが寺院改修への寄付、約280万バーツがお守りなどの代金に関係していたとされています。これらが寺院口座へ入らなかった疑いが警察の捜査対象です。
アティチョート元住職の逮捕容疑は?
アティチョート元住職は単純な横領容疑だけで逮捕されたわけではありません。
現地報道によると、
公的立場にある者による財産の横領、職務上の不正・職務怠慢、国家公務員に準じる立場での不正行為、マネーロンダリングの共謀など複数の容疑がかけられています。
捜査当局は、寺院から流出したとされる資金が親しい女性へ渡され、別の資産へ換えたり第三者名義にしたりすることで資金の出所を隠した可能性を調べています。
2026年9月18日時点では捜査段階であり、元住職の有罪が裁判で確定したわけではありません。
アティチョート・タンマワローは誰で何者?
アティチョート元住職は、逮捕当時66歳。
アユタヤ県にあるワット・プッタイサワンという歴史ある王室寺院の住職を務めていました。
The Nationは、逮捕時の名前を「Phra Wachirayan」とし、別名として「Luang Pho Atichot Dhammavaro」を紹介しています。また、僧侶として「Phra Ratchakhana」の位を持っていたと報じています。
名前の表記が複数ある理由
日本語報道では、
「アティチョート・タンマワロー」
「ルアンポー・アティチョート」
「プラ・ワチラヤーン」
など複数の名前が登場します。
英字報道でも「Atichot Thammaparo」「Atichoti Dhammavaro」など表記に揺れがありますが、いずれも今回逮捕されたワット・プッタイサワン元住職を指しています。
「ルアンポー」はタイで年長・尊敬される僧侶に対して使われる呼称です。
ワット・プッタイサワンとはどんな寺?
ワット・プッタイサワンは、タイ中部アユタヤ県にある王室寺院です。
14世紀から続く歴史ある寺院で、アユタヤを代表する古刹の一つとして知られています。今回の人物は事件発覚まで同寺の住職でした。
政府関係者や実業家、警察・軍関係者などを含め、多くの信者を集める著名な寺院だったことも今回の事件がタイ国内で大きく取り上げられた理由の一つです。
「リアン・ヌア・ドゥアン」のお守りでも有名
アティチョート元住職は、タイ国内で人気を集めた「ヌア・ドゥアン(Nuea Duang)」と呼ばれるお守りでも知られていました。
Khaosod Englishは、元住職がワット・プッタイサワンの「Nuea Duang」アミュレットで知られていたと報じています。
日本語報道では「リアン・ヌア・ドゥアン」と紹介され、「運勢や地位を高める」として人気のお守りだったとされています。
有名なお守りを手掛ける僧侶として広い知名度を持っていたため、逮捕のニュースは宗教界だけでなく一般社会にも大きな衝撃を与えました。
元チアリーダー女性プンヤウィーは誰?
アティチョート元住職とともに逮捕されたのが、プンヤウィー氏です。
現地報道では47歳で、元住職と親しい女性として紹介されています。警察は、寺院から流れたとされる資金を別の資産へ変換したり、所有者を分かりにくくしたりする行為に関与した疑いを調べています。
プンヤウィーは元チアリーダー?
タイの複数メディアでは、プンヤウィー氏について、
大学を卒業し、約30年前に大学のチアリーダーを務めていた人物
と紹介されています。また、シングルマザーとして生活した後、供物や祈願・儀式関連の商品を扱う事業をしていたとの報道もあります。
ただし、この「元チアリーダー」などの経歴については警察発表ではありません。
Manager Onlineも、人物経歴の一部はオンライン上で出た情報で、公的資料ですべて確認されたものではないと注意を付けています。
そのため、
「47歳のプンヤウィー氏が逮捕された」ことは確認できますが、「元チアリーダー」という経歴は現地メディア・オンライン情報をもとにした紹介
として分けて見る必要があります。
高僧アティチョートと元チアリーダー女性の関係は?
警察や主要英字メディアは、プンヤウィー氏を元住職の「close female associate」、つまり「親しい女性」「近しい女性関係者」と表現しています。
単なる寺院関係者だったのか、恋愛関係だったのかという点については、防犯カメラ映像が大きな手掛かりになりました。
僧房内で性的な行為をしたとされる映像
警察が元住職の僧房を捜索した際、室内の防犯カメラ映像を確認しました。
The Nationによると、映像には元住職が女性と親密に接し、性的な行為に及んでいる場面が記録されていたと警察が説明しています。
この映像の存在が報じられたことで、タイ国内では資金問題と並んで女性関係も大きく取り上げられました。
防犯カメラ動画は本物?2人は映っていることを認めた
防犯カメラの映像については、ネット上でも急速に拡散しました。
ただし「誰かが作った偽動画なのでは」という話ではありません。
Thairathが犯罪抑制局幹部の説明として報じたところでは、アティチョート元住職とプンヤウィー氏は、映像に映っている人物が自分たちであること自体は認めたとされています。
一方で、2人は資金横領やマネーロンダリングなど刑事事件の容疑については当初否認したと報じられています。
つまり、
「映像に映っている人物が2人であること」
と、
「9200万バーツを不正に横領・資金洗浄したこと」
は別々に考える必要があります。
なぜ僧侶と女性の関係が問題になった?
上座部仏教の僧侶には厳しい戒律があり、性的な関係を持つことは重大な戒律違反に当たります。
そのため、この防犯カメラ映像は刑事事件とは別に、アティチョート元住職が僧侶としての身分を維持できるのかという問題にも発展しました。
逮捕当日の9月10日には還俗・僧籍離脱の手続きが行われています。
アティチョート元住職は逮捕当日に還俗
アティチョート元住職は9月10日の逮捕後、僧侶の身分を失いました。
一部報道では本人が還俗を申し出たとされていますが、翌日のタイ仏教当局に関する報道では、重大な戒律違反に該当するため僧籍を離れたとの説明も出ています。
そのため、現在は「高僧」「住職」ではなく、正確にはワット・プッタイサワンの元住職・元僧侶です。
捜索で約2億1500万バーツの資産を押収
事件では、捜査当局が押収した資産の規模も注目されました。
犯罪抑制局によると、アティチョート元住職とプンヤウィー氏から押収された資産は、合計で2億1522万9847バーツに達したとされています。
アティチョート元住職側から約2億500万バーツ
Thairathによると、元住職側から押収された資産は約2億500万バーツ。
この中には約1億3830万バーツの現金や、金塊・金製品などが含まれていました。金は約1000バーツ重量で、重量換算すると約15キロ規模です。
プンヤウィー氏側から現金と金
一方、プンヤウィー氏側では約387万バーツの現金に加え、約90バーツ重量の金が押収され、その金の評価額は約615万バーツと報じられています。
海外報道では両者を合わせた金塊・金製品について「約16キロ」とまとめられている例もあります。
押収資産21500万バーツ=横領額ではない
ここは混同しやすい部分です。
押収された約2億1500万バーツの資産すべてが、寺院から横領した金だと確定したわけではありません。
警察自身も、
「どの資産が本人の正当な個人資産なのか」
「どれが寺院資金から形成された可能性があるのか」
を調べています。
したがって、
横領疑惑の当初被害額=約9200万バーツ超
警察が押収した資産=約2億1500万バーツ
という2つの数字は意味が異なります。
さらに預金2億9000万バーツ超も捜査対象
The Nationは9月11日、その後の捜査で元住職に関係する銀行預金が2億9000万バーツを超えていることも判明したと報じています。
捜査当局は銀行口座や土地、金、現金などの資金源を追跡し、寺院資金との関連を調べています。
そのため、今後の捜査によって事件の対象金額がさらに変わる可能性があります。
なぜプンヤウィー氏も逮捕された?
プンヤウィー氏は単に「僧侶と親密な関係だったから」逮捕されたわけではありません。
捜査当局は、アティチョート元住職から流れたとされる金を受け取り、資産へ変換したり所有関係を隠したりする行為に関与した疑いがあるとみています。
Thairathは、プンヤウィー氏について、公的立場にある人物による横領や職務上の不正を手助けした疑い、マネーロンダリング共謀の疑いなどで逮捕状が出たと報じています。
したがって、刑事事件の中心はあくまで寺院資金の流れです。
2人はいつから親密だった?
2人がいつから私的な関係になったのかについては、報道によって情報に幅があります。
警察捜査では少なくとも過去2年以上にわたる資金の流れが確認されており、現地メディアでも近年、2人が非常に近い関係にあったと伝えられています。
一方、一部タイメディアではプンヤウィー氏がかなり以前から寺院と関わっていたとの情報もあります。
ただし「知り合った時期」と「男女として親密になった時期」は同じではないため、正確な交際開始時期は確定していません。
事件は匿名の告発から始まった
捜査のきっかけは2026年7月中旬に警察へ寄せられた情報でした。
Khaosod Englishや現地報道によると、元住職による寺院資金の扱いや女性関係を疑う情報を受け、犯罪抑制局が内偵を開始しました。
その後、
7月中旬に情報提供
↓
警察が内偵・資金の流れを調査
↓
寄付証明書や口座情報を確認
↓
9月8日に逮捕状
↓
9月10日に寺院などを一斉捜索
↓
元住職とプンヤウィー氏を逮捕
という流れで事件が表面化しました。
捜索は4都県・6か所に拡大
警察の捜索はワット・プッタイサワンだけではありません。
報道によると、アユタヤ、バンコク、パトゥムターニーなどを含む4都県の計6か所が捜索され、現金、金、土地の権利書など多数の資産が押収されました。
警察は元住職とプンヤウィー氏だけで事件が完結していない可能性も視野に入れています。
ほかにも関係者?警察は1~2人を追加捜査
犯罪抑制局は9月12日、さらに1~2人が資金の流れに関係している可能性を調べていると明らかにしました。
銀行口座や関連資産を追跡し、資金の出所を説明できない人物については追加で刑事責任を問う可能性があります。
現時点では追加人物の身元や立場は確定していません。
行為動画が拡散したが事件の本丸は資金疑惑
日本では「タイの高僧と元チアリーダーの動画」という部分が特に注目されています。
しかし刑事事件として中心になっているのは、寺院資金の横領・不正流用とマネーロンダリング疑惑です。
防犯カメラ映像は、僧侶として重大な戒律違反があったことを示す材料として大きな問題になりましたが、映像そのものが約9200万バーツの横領を証明するわけではありません。
資金事件と女性問題は関連して捜査されていますが、法的には分けて考える必要があります。
タイ高僧アティチョートは誰で何した?現在までに分かっていること
アティチョート・タンマワローは、タイ中部アユタヤ県の王室寺院ワット・プッタイサワンで住職を務めていた66歳の著名な僧侶です。
「プラ・ワチラヤーン」「ルアンポー・アティチョート」などの名前でも知られ、人気のお守り「ヌア・ドゥアン」を手掛けた僧として高い知名度がありました。
しかし警察は、2年以上にわたり寺院名義の寄付証明書を使いながら資金を寺院口座へ入れず、9200万バーツ以上を不正に流用した疑いがあるとして2026年9月10日に逮捕しました。
元住職から親しい女性へ資金が渡り、別の資産に変換するなどして出所を隠した疑いもあり、マネーロンダリング容疑を含めて捜査されています。
同時に逮捕されたのが47歳のプンヤウィー氏です。
現地メディアでは大学時代にチアリーダーだった女性と紹介されていますが、この経歴についてはオンライン上の人物情報をもとにした報道が中心で、公的資料による完全な裏付けは確認されていません。
一方、元住職の僧房内に設置された防犯カメラには2人が親密な行為に及ぶ場面が記録されており、2人は映像に映っている人物が自分たちであることは認めたと報じられています。
アティチョート元住職は逮捕後に僧侶の身分を失いました。
また、捜索では元住職とプンヤウィー氏から合計約2億1523万バーツ相当の資産が押収され、金塊・金製品、現金、土地関連資料などが確認されています。ただし、これらすべてが寺院から横領された資産だと確定したわけではなく、警察が現在も資金源を調べています。
2026年9月18日時点では事件は捜査中です。
今後は約9200万バーツとされる寺院資金がどのような経路で移動したのか、押収された2億バーツ超の資産のうちどこまでが寺院資金と関係するのか、さらに別の関係者が存在するのかが焦点になります。

