
埼玉栄高校で2024年11月に起きた車の横転死亡事故をめぐり、亡くなった男子生徒の両親が2026年9月1日、学校法人佐藤栄学園や学校関係者、運転していた生徒らを相手に損害賠償請求訴訟を起こしました。
「埼玉栄高校死亡事故はなぜ起きたのか」「なぜ学校側まで訴えられたのか」「訴訟相手は誰なのか」と改めて注目が集まっています。
事故は2024年11月16日深夜、さいたま市西区にある埼玉栄高校の総合グラウンドで発生しました。
男子生徒4人が男子サッカー部のグラウンド整備用軽自動車を無断で使用し、車がグラウンド脇ののり面に乗り上げて助手席側を下に横転。助手席にいた当時17歳の男子生徒が死亡しました。学校側が設置した第三者委員会も、車両の鍵を無施錠の車内に置く管理方法や、生徒による無断運転を長期間把握できなかった学校側の管理体制に問題があったと指摘しています。
そして2026年9月1日、死亡した生徒の両親は、車両管理や生徒指導に不備があったとして、さいたま地裁に約1億3660万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
埼玉栄高校死亡事故は何があった?
事故が起きたのは2024年11月16日午後11時半ごろです。
埼玉栄高校の寮で生活していた男子生徒4人が深夜に寮を抜け出し、校舎から離れた総合グラウンドへ向かいました。そこで男子サッカー部がグラウンド整備に使っていた軽自動車を動かし、事故が起きたと第三者委員会の報告書は認定しています。
男子生徒が無免許でグラウンド整備車を運転
事故車両は一般道路を走行するためのものではなく、男子サッカー部がグラウンド整備に使用していた軽自動車でした。
運転していたのは高校生の男子生徒で、運転免許は持っていませんでした。
車には運転していた生徒を含め4人が乗り、グラウンド内を走行していたとされています。
のり面に乗り上げて助手席側を下に横転
埼玉新聞によると、軽自動車はグラウンド脇にあるのり面に乗り上げた後、助手席側を下にして横転しました。
助手席に乗っていた17歳男子生徒は当時、窓から上半身を外へ出していたとみられ、横転した際に車体と地面の間に身体を挟まれたとされています。
男子生徒は頭を強く打ち、その後死亡しました。後部座席にいた別の生徒1人も軽傷を負っています。
「箱乗り」と表現されることもありますが、主要報道で確認されているのは「助手席の窓から身を乗り出していた」という状況までです。
埼玉栄高校死亡事故はなぜ起きた?直接の事故原因
事故の直接的な流れは、
無免許の高校生が車を運転
↓
グラウンド内を走行
↓
車がのり面に乗り上げる
↓
助手席側を下にして横転
↓
窓から身を乗り出していた男子生徒が車体と地面に挟まれる
というものです。
しかし、第三者委員会は単に「生徒が無断で車に乗ったから起きた事故」とは見ていません。
学校側の車両管理や安全管理にも、事故を招いた背景があったとしています。
なぜ高校生が車を運転できた?鍵が車内に置かれていた
今回の事故で大きな問題になったのが、事故車両と鍵の管理方法です。
事故当時、軽自動車は施錠されておらず、鍵も車内に置かれていました。
車は無施錠で鍵も車内
テレビ朝日によると、遺族側は訴状で、事故車両は鍵を車内に置いたまま無施錠で放置され、生徒であれば誰でも車を動かせる状態だったと主張しています。
警察の捜査では、男子サッカー部の監督が「すぐグラウンド整備ができて便利だと思った」という趣旨で車内に鍵を置くようにし、コーチもその指示に従ったとされています。
監督とコーチはいずれも、安全管理を怠ったとする容疑について認めていると埼玉新聞は報じています。
2023年ごろから車内に鍵を置く管理が常態化
事故車両はもともと鍵を監督室などで管理していました。
しかし遺族側の訴状によると、2023年3月以降は無施錠の車内に鍵を保管することが常態化していたとされています。
「車は生徒が使うものではない」というルールがあったとしても、物理的には簡単に動かせる状態が長期間続いていたことになります。
生徒73人が無断運転?第三者委員会が常態化を指摘
さらに第三者委員会の調査で判明したのが、生徒による無断運転が今回の4人だけではなかったことです。
埼玉新聞は、事故までに延べ73人の生徒が車を無断運転していたことが調査で判明したと報じています。
無断運転は約2年前から始まっていた
第三者委員会によると、生徒による無断運転は2022年末ごろから始まり、事故まで約2年間にわたって常態化していました。
当初はある部活動の生徒の間で始まり、その後、ほかの部活動の生徒にも広がったとされています。
第三者委員会は、
- 車両が無施錠だった
- 鍵を簡単に利用できた
- 学校側が無断運転を把握できなかった
- 車両を学校備品として適切に管理していなかった
- 車両の安全点検や管理体制が十分ではなかった
ことなどを事故の背景として指摘しました。
事故前にも車のミラーや屋根が破損していた
学校側が生徒の無断運転を知らなかったとしても、「気づくきっかけはなかったのか」という疑問もあります。
警察の捜査では、事故以前から車に異変が起きていました。
ミラーの破損や車体のへこみを教諭も認識
埼玉新聞によると、事故車両は2023年8月ごろから複数回、ミラーが壊れたり車体がへこんだりしていました。
車を管理していた監督やコーチも破損自体は認識していたものの、「誰かが侵入していたずらしたと思った」「へこんでいたが気にしなかった」という趣旨の説明をしていたとされています。
警察は、こうした破損が確認されていれば、生徒らによる無断使用や事故の可能性を予見できたのではないかという点も捜査しました。
事故の1カ月前にも同じ生徒が横転事故?遺族側が主張
今回の民事訴訟で新たに注目されたのが、死亡事故の約1カ月前にも事故があったという遺族側の主張です。
テレビ朝日によると、訴状では事故の約1カ月前、今回と同じ男子生徒が同じ場所で車を無断運転し、横転させる事故を起こしていたとしています。
学校側は再発防止策を取らなかったと遺族が主張
遺族側は、この前兆となる事故があったにもかかわらず、
- 十分な調査をしなかった
- 車の鍵の管理方法を改めなかった
- 生徒への再発防止指導を行わなかった
などと主張しています。
これは今回の訴訟で遺族側が示している主張であり、民事裁判で学校側の法的責任が確定したという意味ではありません。
今後、学校側がどのように反論するのかも焦点になります。
第三者委員会は事故原因をどう判断した?
佐藤栄学園は2025年5月、事故原因などを検証する第三者委員会を設置しました。
2026年2月16日には調査報告書が公表されています。
「単なる偶発事故」ではなく管理体制の問題を指摘
第三者委員会は、車の無断使用が長期間続いた背景として、学校側の組織的な管理体制に問題があったと指摘しました。
特に事故車両は、本来学校の備品として管理されるべきだったにもかかわらず、備品一覧が長期間更新されておらず、正式な管理対象から漏れていたとされています。
車両の安全点検や鍵の管理についても、学校全体で統一された仕組みがありませんでした。
学校側は報告書について「内容を重く受け止め、再発防止策の具体化に取り組む」としています。
遺族はなぜ佐藤栄学園を提訴した?
死亡した男子生徒の両親が提訴した大きな理由は、事故を生徒だけの責任ではなく、学校側の安全管理不備も重なって発生した事故だと考えているためです。
遺族代理人は第三者委員会報告書公表後、「偶発的なものではなく、学校側の長期的な管理不全の結果」という趣旨で学校側を批判していました。
車両管理と生徒指導の不備を問題視
2026年9月1日の提訴で両親は、
- 車が無施錠だった
- 鍵が車内に置かれていた
- 無断運転が常態化していた
- 車両の破損が過去にもあった
- 約1カ月前にも横転事故があったとされる
- 学校側が十分な調査・再発防止を行わなかった
などを問題視しています。
埼玉栄高校死亡事故の訴訟相手は誰?
「訴訟相手は誰なのか」という点については、学校法人だけが訴えられているわけではありません。
報道によると、両親は複数の学校関係者や生徒側にも賠償を求めています。
提訴された相手
報道で確認できる主な相手は、
- 学校法人佐藤栄学園
- 佐藤栄学園の理事長
- 埼玉栄高校の校長
- 埼玉栄高校の教頭
- 男子サッカー部の部長
- 男子サッカー部監督
- 男子サッカー部コーチ
- 車を運転していた男子生徒
- 同乗していた男子生徒
- 生徒らの保護者
などです。
佐藤栄学園の公式サイトによると、理事長は田中淳子氏です。
なお、報道機関によって被告の説明範囲に違いがあり、JNNは学校法人、理事長、校長・教頭、男子サッカー部関係教諭、運転生徒と保護者などと伝えています。
損害賠償はいくら?約1億3660万円
遺族が求めている損害賠償額は、およそ1億3660万円です。
共同通信は約1億3660万円、埼玉新聞は約1億3662万円、JNNは1億3663万円と報じており、端数処理などで若干の違いがあります。
重要なのは、この金額が裁判所から認められた「賠償金」ではないという点です。
現時点では遺族側が裁判で請求している金額です。
今後の審理で、
- 各被告に法的責任があるか
- 誰がどの程度の責任を負うか
- 損害額はいくらと認定されるか
などが判断されます。
死亡した男子生徒の名前は?顔写真は公開されている?
「埼玉栄高校死亡事故 名前」「死亡した生徒は誰」と調べている人も多いと思います。
しかし、2026年9月2日時点でも、死亡した17歳男子生徒の実名は主要報道では公表されていません。
主要報道は「当時17歳の男子生徒」と表記
共同通信、テレビ朝日、埼玉新聞などは一貫して、
「男子生徒=当時17歳」
などの匿名表記を使用しています。
死亡した生徒は未成年者であり、遺族も実名を積極的に公表している状況ではありません。
本人と確認された顔写真についても主要報道では公開されていません。
SNS上などで名前や写真を推測する投稿があったとしても、本人と確認されていない情報を事件当事者として扱うことはできません。
死亡した生徒はサッカー部?実際は車がサッカー部所有
「埼玉栄高校死亡事故 サッカー部」と検索されるため、死亡した男子生徒もサッカー部員だったと思われることがあります。
しかし、事故車両が男子サッカー部のグラウンド整備用車両だったことと、死亡生徒の所属部活動は別です。
埼玉新聞は、死亡した男子生徒が陸上部に所属していたと分かる内容を報じています。
つまり、
事故車両=男子サッカー部が管理していた車
であり、
死亡した生徒=サッカー部員とは限らない
という点には注意が必要です。
運転していた生徒の名前・顔写真は?
運転していた男子生徒の実名も主要報道では公表されていません。
事故当時は高校生の未成年者であり、報道では「男子生徒」「元男子生徒」などとされています。
顔写真についても、本人だと確認できる画像は主要報道では掲載されていません。
ネット上で埼玉栄高校の部員名簿やSNSから該当人物を推測することは、別人を巻き込む可能性があります。
現時点で確認できるのは、事故当時に高校2年生で無免許だった男子生徒が車を運転していたというところまでです。
運転していた生徒は書類送検された?
埼玉県警は2025年11月、事故当時に車を運転していた男子生徒について、自動車運転処罰法違反の過失致死傷の疑いで書類送検しました。
埼玉新聞によると、その後さいたま地検からさいたま家庭裁判所へ送致されています。
事故当時の運転生徒は未成年だったため、刑事手続きについても成人の事件とは異なる扱いになります。
サッカー部監督・コーチも書類送検
2026年3月には、車両を管理していた男子サッカー部の監督とコーチも書類送検されました。
埼玉県警は、監督の男性教諭(43)とコーチの男性教諭(38)について、業務上過失致死傷の疑いでさいたま地検に書類送検しています。
車の安全管理を怠った疑い
警察は、
- 車内に鍵を置いていた
- 車を無施錠にしていた
- 過去のミラー破損などを把握していた
- 無断使用による事故を予測できた可能性がある
にもかかわらず適切な対応を取らなかった疑いがあるとみています。
監督とコーチは容疑を認める趣旨の供述をしていると報じられています。
ただし、書類送検は有罪判決を意味するものではありません。
死亡生徒にも過失相殺はある?裁判ではどうなる?
ネット上では、
「深夜に無断で車へ乗っていたなら学校だけの責任なのか」
「窓から身を乗り出していた点は賠償額に影響しないのか」
という意見も出ています。
民事裁判では「過失相殺」が争点となる可能性があります。
過失相殺とは?
民法722条2項では、被害者側にも過失があった場合、裁判所はそれを考慮して損害賠償額を決めることができると定めています。
今回についても、
- 深夜に寮を無断で出たこと
- 無免許の生徒が運転する車に同乗したこと
- 窓から身を乗り出していたとされること
などが裁判でどのように評価されるかは、今後の主張・立証次第です。
一方で遺族側は、そもそも学校側が車を適切に施錠し、鍵を管理していれば無断運転自体を防げたとして、安全管理上の責任を問うています。
2026年9月2日時点では裁判が始まったばかりであり、「学校側が何割、生徒側が何割」といった責任割合は決まっていません。
佐藤栄学園・埼玉栄高校は提訴に何とコメント?
学校法人側は今回の提訴について、まだ詳しい反論を公表していません。
テレビ朝日の取材に対し佐藤栄学園は、
訴状が届いた後に内容を確認し、適切に対応する
という趣旨のコメントをしています。
JNNに対しても、訴状を確認できていないため現時点でのコメントは控えるとしています。
第三者委員会報告書については2026年2月、学園側が「内容を重く受け止め、再発防止策の具体化に取り組む」と公式に発表しています。
埼玉栄高校死亡事故を時系列で確認
事故から提訴までの流れは次のようになります。
2024年11月16日
深夜、埼玉栄高校の総合グラウンドで男子生徒らがグラウンド整備用軽自動車を無断運転。
車がのり面に乗り上げて横転し、助手席の17歳男子生徒が死亡しました。
2024年11月19日
佐藤栄学園が記者会見を開催。
田中淳子理事長が遺族らに謝罪し、学校側は鍵の管理に落ち度があったとの認識を示しました。
2025年5月
事故原因や学校側の管理体制を検証する第三者委員会が設置されました。
2025年11月
運転していた男子生徒が過失致死傷の疑いで書類送検されました。
2026年2月16日
第三者委員会が調査報告書を公表。
無断運転の常態化や車両・鍵の管理体制などに問題があったと指摘しました。
2026年3月6日
男子サッカー部の監督とコーチが業務上過失致死傷の疑いで書類送検されました。
2026年9月1日
死亡した男子生徒の両親が佐藤栄学園などを相手に、約1億3660万円の損害賠償を求めてさいたま地裁に提訴しました。
埼玉栄高校死亡事故はなぜ起きた?現在分かっていること
埼玉栄高校死亡事故は、2024年11月16日深夜、学校の総合グラウンドで高校生が無免許でグラウンド整備用の軽自動車を運転し、車がのり面に乗り上げて横転したことで発生しました。
助手席にいた17歳男子生徒は窓から身を乗り出していたとみられ、車体と地面に挟まれて死亡しました。
しかし第三者委員会は、事故の背景に学校側の管理体制の問題もあったと指摘しています。
車は無施錠で、鍵も車内に置かれていました。
さらに生徒による無断運転は約2年間にわたり常態化し、調査では延べ73人が無断運転していたことも判明しています。
事故以前には車のミラーや車体が破損する異変があり、監督やコーチも破損自体を把握していました。
遺族側はさらに、死亡事故の約1カ月前にも同じ運転生徒による横転事故があったにもかかわらず、学校が十分な調査や再発防止策を取らなかったと訴えています。
こうした事情から両親は2026年9月1日、佐藤栄学園、理事長、学校幹部、サッカー部関係教諭、運転・同乗していた生徒や保護者らに約1億3660万円の損害賠償を求めて提訴しました。
一方、死亡した17歳男子生徒や運転していた男子生徒の名前、顔写真は主要報道では公表されていません。
今回の約1億3660万円もあくまで遺族側の請求額で、学校や教諭、生徒側の責任割合が決まったわけではありません。
今後の裁判では、生徒たちの行動だけでなく、車両と鍵の管理、長年の無断運転を学校が把握できなかった理由、事故前に存在したとされる前兆をどこまで予見できたのか、さらに死亡した生徒側の行動を過失相殺でどう評価するのかが大きな争点になると考えられます。

