
簗和生農林水産大臣をめぐり、「予算カット発言だけではないの?」「過去に何をした?」「公職選挙法違反なの?」と注目が続いています。
最初に大きな問題となったのは、2026年5月に地元・栃木県で開かれた自民党関係者の会合で、自身を支持しなかった首長がいる那須烏山市と那珂川町について、道路予算を「大幅にカットした」という趣旨の発言をしていたことです。
簗氏は当初、農水相就任前の政治活動だとして詳しい説明を控えていましたが、10月5日に発言を認めたうえで撤回・謝罪しました。一方、国土交通省に予算を減らすよう働きかけた事実はないと否定しています。
国交省も10月6日に調査結果を公表し、簗氏から予算配分について問い合わせがあったことは認めたものの、担当部局への圧力や予算配分への影響は確認されなかったとしています。
ところが、その直後には週刊文春が、2024年と2026年の衆院選で簗氏側が支援者を無料のシャトルバスで出陣式会場へ送迎していたとして、公職選挙法上の買収に当たる可能性を指摘する記事を掲載しました。簗氏は10月9日、「法令に則り適正に処理しているという認識」としたうえで、事実関係を確認中だと説明しています。
2026年10月13日朝の時点では、簗氏の公職選挙法違反が捜査機関や裁判所によって認定された事実は確認されていません。
簗和生農水相は何をした?予算カット発言が問題に
今回の問題の発端は、2026年5月24日に栃木県大田原市で開かれた自民党大田原支部総会後の懇親会です。
週刊文春や週刊新潮、テレビ朝日などが報じた音声では、簗氏が那須烏山市と那珂川町について、2026年度の道路予算を大幅に減らしたという趣旨の発言をしています。
那須烏山市64%減・那珂川町54%減と発言
簗氏は会合で、那須烏山市は前年度比64%減、那珂川町は54%減という具体的な数字を挙げていました。
さらに、その背景として、2月の衆院選で両自治体の首長が簗氏の対立候補を支援していたことや、地域での得票にも言及したと報じられています。
こうした話し方から、
「自分を支持しなかった自治体への政治的な報復として公共事業予算を減らしたと言っているのではないか」
との批判が広がりました。
ただし、後述する国交省の調査では、簗氏による働きかけで予算が減額された事実は確認されていません。
実際に道路予算は減っていた?国交省の調査結果
今回やや分かりにくいのが、「簗氏の発言は事実と違う」とされる一方で、那須烏山市と那珂川町の一部の予算が実際に減っていることです。
国土交通省が10月6日に公表した精査結果では、両市町が自ら実施する事業に限ると、那須烏山市は前年度比26.2%減、那珂川町は54.1%減でした。
那須烏山市の「64%減」は一部事業だけを比較した数字
簗氏が会合で語った那須烏山市の「64%減」については、国交省が簗氏へ説明した際、過年度から継続していた事業だけを対象に計算した数字でした。
2026年度から新たに掲載された3事業を含めると、那須烏山市が実施する事業全体では26.2%減になります。
一方、那珂川町は新規事業を含めても54.1%減で、簗氏が語った数字とほぼ一致します。
県事業まで含めると両地域とも増額
さらに国交省は、市町が行う事業だけではなく、その自治体の区域内で栃木県が行う道路事業も合わせて確認しています。
その結果、地域全体の「想定国費」は、
那須烏山市エリアが20.5%増、那珂川町エリアが22.0%増でした。
つまり、
| 比較対象 | 那須烏山市 | 那珂川町 |
|---|---|---|
| 市・町が実施する事業 | 26.2%減 | 54.1%減 |
| 県事業まで含めた地域全体 | 20.5%増 | 22.0%増 |
となります。
「2自治体の道路予算を丸ごと政治的に削減した」と単純に表現すると、国交省が公表した数字とは一致しません。
簗和生氏は国交省に予算カットを働きかけた?
国交省の調査で確認されたのは、簗氏が2026年2月中旬ごろ、那須烏山市と那珂川町の2026年度予算配分額について問い合わせていたことです。
しかし、当時はまだ国の2026年度予算が成立する前でした。
そのため国交省側は、その場では2026年度の配分額は分からないと回答し、過去2年度の配分実績を確認しました。
4月の予算成立後に簗氏へ配分額を説明
2026年度予算が4月7日に成立した後、国交省は地方自治体への配分額を決定。
その後、2月に簗氏から問い合わせがあったことを踏まえ、両市町の2026年度の配分状況を簗氏側へ説明しています。
簗氏は、このとき説明された市・町事業の数字を5月の地元会合で話したと説明しています。
佐々木紀・当時の国交副大臣は予算配分に関与した?
「簗和生 佐々木紀」と検索されているのは、国交省への問い合わせをめぐり、当時の国土交通副大臣だった佐々木紀氏の名前が出ているためです。
10月9日の井林辰憲国交相の会見によると、佐々木氏は、簗氏から問い合わせを受けた際に事業担当部局へ2026年度の配分額を照会しておらず、簗氏の名前も担当部局へ伝えていなかったと説明しています。
事業担当部局に問い合わせは伝わっていなかった
国交省の確認では、2月中旬ごろの簗氏からの問い合わせは、実際に予算配分を行う事業担当部局には伝わっていませんでした。
当時の官房長からも、働きかけや圧力を受けた事実は確認されなかったとされています。
井林国交相はこれらを踏まえ、報道されたような形で道路予算が削減された事実はなかったとの判断を改めて示しました。
なぜ「恫喝音声」と呼ばれている?
今回の音声は週刊誌や一部報道で「恫喝音声」と表現されています。
ただし、「恫喝」は報道や批判する側が使っている表現であり、簗氏の行為が脅迫罪などに当たると認定されたという意味ではありません。
批判が強まったのは、単に「予算が減った」と説明しただけではなく、選挙での支持や自らの政治的立場と予算を結び付けるような発言が含まれていたためです。
「私が取ってきた予算をなんで受注する」と発言
公開された音声では、簗氏が地元建設業界について「私が取ってきた予算をなんで受注するのか」と伝えたという趣旨の発言も確認されています。
自身が当時、自民党の筆頭副幹事長だったことにも触れていました。
このため、「自分を応援しなければ公共事業で不利益があると受け取れるのではないか」と批判が強まりました。
予算カット発言は突然ではなかった?過去の選挙演説も注目
今回の5月の発言が報じられた後、2026年2月の衆院選期間中に行った演説も注目されました。
テレビ朝日やJ-CASTニュースによると、簗氏は選挙期間中、政権与党の議席がなくなった地域では予算が削られるという趣旨の発言をしています。
簗氏の後援会側が公開した動画にも「無所属や野党では3区の予算はカットされる」という趣旨のタイトルが付けられていたとJ-CASTニュースは報じています。
このため、「5月の懇親会で一度だけ言葉を誇張した」という説明と、過去の選挙演説をどう受け止めるかも論点となっています。
簗和生農水相はなぜ予算カット発言を撤回した?
簗氏は10月2日まで、「大臣就任前の一議員としての活動」などを理由に詳細な回答を控える場面が続いていました。
ところが10月5日になると、報道された発言をしたことを認め、撤回して謝罪しました。
10月5日に撤回・謝罪
簗氏は、担当省庁へ予算を削減するよう働きかけた事実はなく、実際には自分がカットしたわけではないにもかかわらず、そのように受け取れる発言をしたとして謝罪しています。
10月6日の農林水産省会見では、党員・支持者の集まりで気持ちが高揚し、誇張した表現になったという趣旨の説明もしています。
「事実と異なる発言だった」と国会でも説明
10月8日の国会でも、簗氏は地元のために仕事をしてきたという思いなどから「事実と異なる発言」をしてしまったと説明。
発言が不適切だったとして、農水相として職務を続ける考えを示しました。
萩生田光一氏も「許されるものではない」と批判
今回の発言には野党だけではなく、自民党内からも厳しい意見が出ています。
自民党の萩生田光一幹事長代行は10月6日の記者会見で、もし簗氏が実際に政治的な思いで職務に当たっていたのであれば「おごり」であり、許されるものではないという趣旨の発言をしました。
一方で、簗氏本人が真意や状況を正直に説明し、国民の懸念を払拭する努力をするよう求めています。
鈴木宗男氏が簗和生農水相を異例の叱責
10月9日には、自民党本部で開かれた農業構造転換推進委員会でも異例の場面がありました。
簗氏が農政について決意表明したものの、一連の騒動に触れなかったため、鈴木宗男参院議員がその場で説明責任を果たす姿勢を示すべきだと苦言を呈しました。
簗氏はその場で改めて謝罪
鈴木氏から指摘を受けた簗氏は、自身の不徳で迷惑や心配をかけているとして、その場で謝罪しました。
同じ与党内から公の場で説明姿勢について苦言が出たことで、問題はさらに注目されることになりました。
簗和生農水相に公職選挙法違反疑惑!シャトルバスとは?
予算カット問題が続く中、10月7日に週刊文春が新たに報じたのが「無料シャトルバス」をめぐる疑惑です。
週刊文春によると、簗氏は2024年10月と2026年1月の衆院選公示日に出陣式を開催。
支援者らが近くの駐車場から会場まで、簗氏側が用意したシャトルバスを利用していたとされています。
支援者は「バス代を払っていない」と証言
週刊文春の取材では、2024年と2026年の双方でバスを利用したという支援者が、料金を支払っていないと証言しています。
同誌の取材に答えた上脇博之・神戸学院大学教授は、無料輸送が公職選挙法上の「財産上の利益」の供与に該当する可能性を指摘しました。
無料シャトルバスなら公職選挙法違反になる?
公職選挙法221条は、当選を得る、または得させる目的で、選挙人や選挙運動者へ金銭や物品、その他の財産上の利益などを供与する行為を買収として規制しています。
ただし、個別の行為が公選法違反に当たるかどうかは、実際の目的、対象者、費用負担、運行の経緯など具体的な事情を踏まえて判断されます。政府も過去の国会答弁で、個別事案の公選法該当性は具体的事実に即して判断されるとしています。
そのため、
「無料シャトルバスがあったと報じられた=簗氏の公職選挙法違反が確定」
ではありません。
簗和生氏はシャトルバス問題をどう説明した?
簗氏は10月9日の農林水産大臣会見で、この報道について質問を受けています。
簗氏は「法令に則り、適正に処理をしているという認識」と述べる一方、指摘を受けて事実関係を確認していると回答しました。
記者から「無料で送迎したのは事実か」と問われた際にも、その場では明言せず、現在事実確認中だとしています。
さらに、事実関係を確認・整理でき次第、説明する考えを示しました。
2026年10月13日朝時点で、確認結果について簗氏側から詳しい追加説明が公表されたことは確認できていません。
公職選挙法違反で逮捕・起訴された?
現時点では、今回の無料シャトルバス問題について、簗氏が逮捕・書類送検・起訴されたとの発表は確認されていません。
選挙管理委員会や捜査機関が、公職選挙法違反だったと正式に認定したとの発表もありません。
したがって、記事では「公職選挙法違反疑惑」「週刊文春が買収に当たる可能性を報道」とするのが現在の事実関係に沿っています。
高市早苗首相の任命責任は?簗氏を続投させる方針
簗和生氏は2026年9月の内閣改造で、農林水産大臣として初入閣しました。
首相官邸の現在の閣僚名簿にも、農林水産大臣として簗氏が掲載されています。
今回の騒動を受け、野党からは高市早苗首相の任命責任も追及されています。
高市首相「任命責任は私にある」
高市首相は10月8日の国会答弁で、簗氏の発言は不適切だと考え、厳しく注意したと説明。
一方で、簗氏には説明責任を果たしたうえで職責を全うしてほしいとして、続投させる考えを示しました。
10月9日にも、農政に関する知識や政策構想力を生かして働いてほしいとして、続投方針を改めて表明しています。
簗和生農水相は辞任する?
2026年10月13日朝時点で、簗和生氏は辞任していません。
簗氏自身も、農林水産行政を前に進めるとして辞任を繰り返し否定しています。
高市首相も続投を明言しています。
野党は問責決議案を検討
一方、参議院では立憲民主党を中心とする野党が、簗氏に対する問責決議案の提出を検討しています。
10月13日から衆議院予算委員会も始まるため、予算カット発言だけでなく、シャトルバス問題などを含めた説明が求められる見通しです。
簗和生農水相の問題を時系列で確認
今回の一連の動きを時系列で見ると、問題が一つだけではないことが分かります。
2026年2月の衆院選では、与党議員がいなくなれば地域予算が減るという趣旨の演説を実施。2月中旬には国交省へ那須烏山市・那珂川町の道路予算を問い合わせました。
5月24日の自民党関係者の会合では、両市町の道路予算を自分が大幅にカットしたという趣旨の発言を行いました。
9月30日に週刊文春などが音声を報道し、10月2日には地元メディアなども音声を公開。簗氏は当初、具体的な説明を控えていました。
10月5日に発言を撤回して謝罪。
10月6日には国交省が精査結果を発表し、簗氏から問い合わせはあったものの、予算配分への圧力や影響は確認されなかったと説明しました。
10月7日には週刊文春が、過去2回の衆院選で支援者を無料シャトルバスで送迎したとする公選法違反疑惑を報道。
10月9日、簗氏はシャトルバス問題について事実確認中と説明し、自民党内では鈴木宗男氏から説明姿勢について厳しい指摘を受けました。
簗和生農水相は結局何をした?現在までの結論
簗和生農水相をめぐって、現時点で確認されている事実と疑惑を分けると分かりやすくなります。
まず確認されているのは、2026年5月の地元会合で、自身を支持しなかった首長がいる那須烏山市・那珂川町について、道路予算を大幅にカットしたという趣旨の発言をしたことです。
簗氏自身も発言を認め、10月5日に撤回・謝罪しました。
一方、国交省の調査では、簗氏から2市町の予算について問い合わせがあったことは確認されたものの、その問い合わせが実際の予算配分担当部署へ伝わった事実や、簗氏から圧力を受けて配分額を決めた事実は確認されませんでした。
さらに、2026年2月の選挙演説でも、与党議員がいなくなれば地域の予算が削られるという趣旨の発言をしていたことが確認されています。
そして新たに浮上したのが、2024年と2026年の衆院選公示日に、支援者を無料シャトルバスで出陣式へ送迎したとする週刊文春の報道です。
この点について簗氏は、法令に則り適正に処理したという認識を示しながらも、改めて事実関係を確認していると説明しています。
したがって、現時点で、
予算カット発言をしたことは確認済みで撤回・謝罪済み。実際に政治的圧力で予算を削減した事実は国交省の調査では確認されていない。無料シャトルバスについては公職選挙法違反の疑惑が報じられているものの、違反が確定した段階ではない
というのが2026年10月13日朝までに確認できる状況です。
簗氏は辞任を否定し、高市首相も続投させる方針です。一方、野党は問責決議案を検討しており、自民党内からも説明責任を求める声が出ています。
10月13日から始まる予算委員会では、予算カット発言の経緯に加え、無料シャトルバス問題について簗氏がどこまで具体的に説明するのか、そして高市首相が現在の続投方針を維持するのかが焦点となります。

