新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るうなか、豪メルボルンのモナッシュ大学が、寄生虫感染症治療薬『イベルメクチン』が新型コロナウイルスの抑制に効果があったことを発表し話題になっています。
この『イベルメクチン』は、ノーベル生理学・医学賞受賞を受賞した『大村智』さんが発見した放線菌から開発された治療薬です。
今回は、モナッシュ大学研究チームの発表内容や『大村智』さんのプロフィール、経歴を紹介させていただきます。
モナッシュ大学研究チームの発表内容
新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るうなか、豪州モナッシュ大学の研究グループは今月3日、既存の寄生虫治療薬「イベルメクチン」を1回投与した結果、試験管内のウイルスが48時間以内に増殖しなくなったと発表した。
「イベルメクチン」は、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学の大村智特別栄誉教授が発見した新種の菌から開発された抗寄生虫薬で、「ストロメクトール」の商品名で承認されている。
医学誌『Antiviral Research(アンチヴァイラル・リサーチ)』に今月3日に掲載された論文によると、豪メルボルンのモナッシュ大学と、ピーター・ドハーティー感染免疫研究所のチームは、ベロ細胞というアフリカミドリザルの腎臓由来の細胞を、新型コロナウイルスに感染させる実験を実施。
ウイルスに2時間さらして感染させた細胞に、さまざまな濃度のイベルメクチンを投与した結果、1回の投与でウイルスの遺伝子増殖を抑制する効果を確認。48時間以内にウイルスのRNAが99.98%減少したとしている。
モナッシュ大・生物医学発見研究所(BDI)のカイリー・ワグスタッフ博士は「実験は試験管内で行われたものであり、これからヒトに対する臨床試験を行う必要がある」と指摘したうえで、「イベルメクチンはすでに承認された薬で、豪州では30年以上使われている。人体への安全性の確認を急ぎたい」と話している。
研究チームの発表によると、『イベルメクチン』を投与したところ、24時間後に新型コロナウイルスのRNAが93%、48時間後には99.98%減少し、毒性作用も見られなかったそうです。
『イベルメクチン』は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智さんが発見した「アベルメクチン」により開発された寄生虫感染症の治療薬ですが、後に人間の感染症などにも効果が認められ、年間3億人もの治療に使用されています。
また、HIVウイルスやインフルエンザウイルスなどのRNAウイルス、狂犬病ウイルスなどのDNAウイルスの感染に対する効果も明らかになっています。
『イベルメクチン』は、これらのウイルスが増殖する際のRNA核内移行に必要なタンパク質生成を抑制していると考えられ、他のRNAウイルスも同様なメカニズムであると予測し、新型コロナウイルスに対する有効性について実験したのではないでしょうか。
ただし、現時点はin vitroの結果であるため、早急にin vivoでの実証を進めていただきたいですね。
臨床で効果が認められたら30年間も使用されている薬剤なので、かなり期待が持てると思います。
大村智さんのwikiプロフィール
大村智さんは、微生物の生産する有用な天然有機化合物の探索研究を45年以上行い、これまでに480種を超える新規化合物を発見し、それらにより感染症などの予防・撲滅、創薬、生命現象の解明に貢献しています。
生年月日:1935年7月12日(84歳)※2020年4月現在
出身地:山梨県北巨摩郡神山村
高校:山梨県立韮崎高等学校卒業
大学:山梨大学学芸学部卒業、東京理科大学大学院理学研究科修士課程修了
学位:薬学博士(東京大学)、理学博士(東京理科大学)
研究分野:有機化学
職業:北里大学 特別栄誉教授
経歴
1935年 山梨県韮崎市生まれ
1954年 山梨県立韮崎高等学校卒業
1958年 山梨大学学芸学部自然科学科卒業
1958年 東京都立墨田工業高等学校 教諭(~1963年)
1963年 東京理科大学大学院理学研究科 修士課程修了
1963年 山梨大学工学部発酵生産学科 文部教官助手(~1965年)
1965年 社団法人北里研究所入所 技術補
1968年 薬学博士(東京大学)
1968年 北里大学 薬学部 助教授(~1975年)
1970年 理学博士(東京理科大学)
1973年 米国Wesleyan大学 客員教授(~1973年)
1973年 北里研究所抗生物質研究室室長
1975年 北里大学 薬学部 教授(~1984年)
1975年 Merck & Co., Inc.とイベルメクチンのロイヤリティ契約を締結
1981年 社団法人北里研究所監事(~1984年)
1984年 社団法人北里研究所理事・副所長(~1990年)
1985年 学校法人北里学園理事(~2003年)
1990年 社団法人北里研究所理事・所長(~2008年)
1993年 学校法人女子美術大学理事(~1997年)
1997年 学校法人女子美術大学理事長(~2003年)
2001年 北里大学北里生命科学研究所教授(~2007年)
2001年 北里大学北里生命科学研究所所長(~2003年)
2002年 北里大学大学院感染制御科学府教授(~2007年)
2003年 学校法人女子美術大学名誉理事長(~2012年)
2005年 米国Wesleyan大学 Max Tishler教授(~現在)
2007年 北里大学名誉教授(~現在)
2007年 北里大学北里生命科学研究所 天然物創薬推進特別研究PSC(~現在)
2007年 学校法人女子美術大学理事長(~2015年)
2008年 学校法人北里研究所名誉理事長(~2012年)
2012年 学校法人北里研究所顧問(~2016年)
2013年 北里大学特別栄誉教授(~現在)
2015年 学校法人女子美術大学名誉理事長(~現在)
2016年 学校法人北里研究所相談役(~現在)
2016年 東京理科大学特別栄誉博士
学術賞受賞・勲章授与
1985年 ヘキスト・ルセル賞【米国微生物学会】
1986年 日本薬学会賞【日本薬学会会】
1989年 上原賞【上原記念生命科学財団】
1990年 日本学士院賞【日本学士院】
1991年 チャールズ・トム賞【米国工業微生物学会】
1992年 紫綬褒章
1992年 フランス国家功労勲章シュバリエ章
1995年 米国工業微生物学会功績賞【米国工業微生物学会】
1995年 藤原賞【藤原科学財団】
1995年 日本放線菌学会 特別功績功労賞【日本放線菌学会】
1997年 ローベルト・コッホ金牌【ドイツ】
1998年 プリンス・マヒドン賞【タイ】
1999年 紺綬褒章
2000年 ナカニシ・プライズ【日本化学会・米国化学会合同】
2000年 野口賞【山梨日日新聞、山梨放送、山梨文化会館】
2005年 アーネスト・ガンサー賞【米国化学会】
2007年 ハマオ・ウメザワ記念賞【国際化学療法学会】
2007年 レジオン・ドヌール勲章
2008年 平成20年度発明奨励功労賞【(社)発明協会】
2010年 テトラへドロン賞【エルゼビア社】
2011年 瑞宝重光章
2011年 アリマ賞【国際微生物連合】
2012年 山梨県韮崎市 市民栄誉賞【韮崎市】
2012年 ノーマン・R・ファルンスワース研究業績賞【米国生薬学会】
2014年 カナダ 2015 ガードナー国際保健賞【ガードナー財団】
2015年 朝日賞【朝日新聞社】
2015年 文化勲章
2015年 ノーベル生理学医学賞
2015年 東京都世田谷区 区民栄誉章【東京都世田谷区】
2015年 東京都栄誉賞【東京都】
2016年 埼玉県栄誉賞【埼玉県】
2016年 埼玉県さいたま市 市民栄誉賞【埼玉県さいたま市】
2016年 日本放線菌学会特別栄誉賞【日本放線菌学会】
2016年 埼玉県北本市 市民栄誉賞【埼玉県北本市】
学会特別会員・称号
1985年 中国医学科学院 名誉教授
1987年 米国生化学・分子生物学会 名誉会員
1991年 ハンガリー国立ラヨス・コーシュス大学 名誉理学博士
1992年 ドイツ科学アカデミー レオポルディナ会員
1992年 米国微生物アカデミー 会員
1994年 米国ウエスレーヤン大学 名誉理学博士
1994年 ドイツ ローベルト・コッホ研究所 名誉所員
1998年 日本化学会 名誉会員
1999年 米国国立科学アカデミー 外国人会員
2000年 山梨県韮崎市 名誉市民
2001年 日本学士院会員
2002年 フランス科学アカデミー 外国人会員
2002年 山梨県県政特別功績者
2003年 日本細菌学会 特別名誉会員
2004年 ロシア自然科学アカデミー 会員
2005年 欧州科学アカデミー(ベルギー)会員
2005年 日本放線菌学会 名誉会員
2005年 中国工学アカデミー 外国人会員
2005年 英国王立化学会 名誉会員
2006年 中国曁南大学 名誉教授
2006年 山梨大学 名誉顧問
2009年 日本農芸化学会 名誉会員
2012年 文化功労者
2014年 The Journal of Antibiotics 名誉編集長
2014年 加藤記念バイオサイエンス振興財団 名誉理事
2015年 山梨科学アカデミー名誉会長
2015年 山梨大学 特別栄誉博士
2015年 山梨県 名誉県民
2016年 東京理科大学 特別栄誉博士
2016年 女子美術大学 名誉博士
2016年 中国上海交通大学 名誉博士
2016年 東京都 名誉都民
2017年 東京都世田谷区 名誉区民
2018年 英国セント・アンドリュース大学 名誉理学博士
大村智さんの功績
ノーベル医学生理学賞
大村智・北里大特別栄誉教授
受賞理由「イベルメクチン」が
コロナ特効薬になるかもしれないという。世界的注目を浴びる「アビガン」
日米共同開発「レムデジビル」日本で開発したお薬が
世界をコロナ不安から救ってくれたら
こんな嬉しいことはないhttps://t.co/Mu3fZoxHh8 https://t.co/zXFsKAx2il pic.twitter.com/rjHeuOYFog— Chieko Nagayama (@RibbonChieko) April 7, 2020
大村智さんが開発に関与した『イベルメクチン』は、当初、動物に対する寄生虫治療薬としての劇的な効果で注目を集めましたが、後に人間にも応用できることが臨床試験により判明し実用化されました。
大村智さんは、『イベルメクチン』の開発に際し、メルク社と特許のロイヤルティ契約を交わしていましたが、疫病に苦しむアフリカや中南米、東南アジアなど約10億人もの人々を救うため、無償配布を条件に特許権利を放棄しました。
これにより多くの人々が救われたのです。
これらの功績により、大村智さんは2015年のノーベル生理学・医学賞を受賞されました。
まとめ
「豪州モナッシュ大学の研究グループは今月3日、既存の寄生虫治療薬「イベルメクチン」を1回投与した結果、試験管内のウイルスが48時間以内に増殖しなくなったと発表した。北里大学の大村智特別栄誉教授が発見した新種の菌から開発された。」
— 原口 一博 (@kharaguchi) April 6, 2020
世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルスですが、一日も早い収束を願うばかりです。
『アビガン』に続き、『イベルメクチン』が特効薬として確立される日は来るのでしょうか。
今後も注目していきたいと思います。
最後までご覧いただき有難うございました。